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メキシコの路上演劇との出会い
1992年にメキシコシティで第1回メキシコ路上演劇祭が開催され、日本から里見のぞみ(マイム)、山上千恵子(ビデオ・アーチスト)が招待参加しました。以降99年まで、5回にわたって参加し、日本にはない演劇の上演形態とその機能に目を瞠りました。
文字通り路上(広場、前庭、公園、駐車場、など)で行われる演劇を、通りがかりの人々が立ち止まり、まわりを取り囲んで見ています。特別な装置や仕掛けはありません。人々を惹きつけるためにドラムなどの楽器、高足(竹馬のようなものを履いて足を長くして演技する)や仮面、またクラウン芸やアクロバットも取り入れ、道行く人々の関心をひきながら、社会的なテーマを取り上げています。いわゆる大道芸が個人の芸を見せることに重きをおいているのに対して、家族の崩壊、ドラッグ、暴力、差別、路上生活するホームレスの子供たちなど、人々の抱える現実を表現し問いかけています。
フェスティバルの期間中は、メキシコ各地から演劇の専門家、学生劇団、学校の先生、演劇を使って教育や福祉に携わる人、市民活動に演劇を取り入れている人、さらには実際に路上生活をしている子どもたちも集まり、さまざまな形態で演じ楽しむうちに、いつしか公共の野外空間は演劇空間に変わっていきました。
特に印象的なのは路上で生活する子どもたち自身が、彼らの状況を表現した劇です。
指導者が路上に何度も出向いて、子どもたちと少しずつコミュニケーションを深め、劇を作っていくのですが(里見のぞみや山上千恵子も何度か加わりました)、その家庭で、子どもたちは自分達のおかれている状況や問題について客観的な視点を持てるようになり、仲間と演じたり作品をつくるという行為を通じて、達成感や誇りを得ていきます。一方、観客にとっても、汚く危ない存在でしかなかった子どもたちが、実際どういう事情で路上生活するようになり、どのような暮らしをしているのか、初めて彼ら自身から見聞きすることで、子どもたちへの見方が変わってくるということです。
フェスティバルでは、路上演劇の表現力を高め、実質的な向上を図るために、プロの演出家、俳優、ダンサー、マイム、アクロバット、大道芸人達によるワークショップもひらかれ、またオルタナティブ演劇会議などもあわせておこなわれ、各地で草の根的に活動している参加者たちが出会い、交流を深め、ネットワークを形成して、技術的にも精神的にも力をつけていくようです。
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